今回は給与と年金に関する昇給率の関係式を紹介します。
x歳、x+1歳の実際の給与水準から補正して得られる標準的な給与を記号としてそれぞれ
と表記します。このように給与も数式上の記号としてあらわすことが出来ます。これを用いることで、どのくらい昇給していくかといった昇給率も求めることが可能になります。
x歳の昇給率は以下のように表すものとします。
・・・①
例えば25歳の補正給与が180,000円で、26歳の補正給与が184,000円とすると、
昇給率は上記の式の右辺にある1を移項した式
を使うと0.00222…となる。
ここで覚えておいてほしいのがは「予定昇給率」といい、将来の補正給与を計算する上で
利用できるという特徴があります。
また、各年齢の補正予定給与を相対的に数値化したものを給与指数(昇給指数という場合もある)といいます。x歳の給与指数は、
と表記します。ここで・・・①を用いると給与指数は、
となり、整理すると
・・・②
となります。加入年齢の給与指数が1の場合は
・・・③
が成り立ちます。
問題1 給与指数 ★☆☆☆☆
加入年齢55歳、定年年齢60歳の定常状態にある年金制度において、制度全体の人数は500、この制度において500人の被保険者の給与総額は10,000万円(1億円)とする。
また、新規加入及び昇給は年一回期初、脱退は年一回期末に発生するものとする。
予定脱退率(脱退には加入中の死亡を含む)、給与指数は以下の通り。

①新規加入の被保険者の見込みを求めなさい。(計算の結果小数が出た場合は、小数第1位を四捨五入し、整数で答えなさい。)
②新規加入の被保険者1人あたりの加入時給与の見込みを求めなさい。
(wakuwaku-math オリジナル問題)
◆解答解説
①制度全体の被保険者数は500人なので、
が成り立ちます。
1から各年齢の予定脱退率を差し引くと残存率が導けるので
となるため、これよりが導け、これを計算すると124.81となるので
新規加入の被保険者の見込みは125人とわかる。
②
加入時の給与をとする。
を用いると各年齢の給与は、
とあらわすことができ、加入年齢の給与指数は1のため、各年齢の給与は
と表すことが出来ます。
ここで数値がわかっている給与総額Sについて考えていく、給与総額は500人の各年齢の被保険者の給与の合計であるので給与総額Sは
=10,000÷588.95=16.9793700
となるためこれより新規加入者の給与は17万円とわかる。
一般に昇給率は、2通りに分類することができ、上記で紹介した昇給率を静態的昇給率といいます。それとは、別に物価上昇や別の世相の影響度合いなどといった時間経過に伴い、変化する要素(こういった要素をベース・アップという)を織り込んだ動態的昇給率というものもあります。
ベースアップなどの要因による昇給率をrとおくと動態的昇給率は、
・・・④
と定義されます。
また、下記のように整理することもできます
・・・⑤
問題2 動態的昇給率 ★★☆☆☆
ある給与比例制の年金制度について考える。この年金制度では、静態的な昇給のほかに年r%のベースアップを見込んでいる。この動態的昇給率によって、ある年度の期初に28歳で加入した者の60歳到達年度の期末給与は66万円となることが見込まれていた。ところが、44歳の期末給与までは予定通りだったものの、その後のベースアップが0.5r%となったため、60歳の給与は60万円となった。
(1)rの値を求めなさい。小数第6位までの小数で求めること。
(2)仮にすべての年齢でベースアップがなかった場合の60歳の給与として最も近いものはどれか選択しなさい。
(A)40万円
(B)42.5万円
(C)45万円
(D)47.5万円
(E)50万円
【年金数理人 年金数理 平成30年度】
◆解答解説
(1)まずは、通常時の問題もなくベースアップがあった際の給与との関係式を考えましょう。
より、
・・・❶
となります。同様に、途中までベースアップがあった際の給与との関係式を立式すると、・・・❷
❶を❷で除するとを導くことができます。
これより、
となります。
(2)次にベースアップがなかった時の昇給(静態的昇給)を考えましょう。
静態的昇給額は、という部分に相当するため、❶の式より
からもとめることが出来ます。より、
これより、45万円とわかります。よって(C)
問題3 動態的昇給率
25歳の給与が300,000円である被保険者について、35歳時点での給与を動態的昇給率に基づき予想したところ、420,000円であった。この動態的昇給率が以下のx歳における給与指数\(b_x\)をもつ静態的昇給率を基礎としている場合、kの値(k>0)に最も近いものは次のいずれか。なお、ベースアップ要因による昇給率は、1.0%とする。また、ベースアップ要因による昇給率をrとした場合、x歳における静態的昇給率\(R_x\)を基礎とする動態的昇給率は\((1+R_x)\times (1+r)-1\)とする。
\(b_x=1+\frac{k}{2}(x-15)\) (x≧15)
(A)0.065 (B)0.067 (C)0.069
(D)0.071 (E)0.073
【年金数理人 2023】
◆解答解説
動態的給与昇給率から
\(B_{35}=B_{25}\times (1+R_{25})(1+r)\times ・・・\times (1+R_{34})(1+r)\)・・・❶
これを整理すると
\(\frac{B_{35}}{B_{25}}=(1+R_{25})・・・(1+R_{34})(1+r)^{10}\)・・・❷
となります。ここで給与指数から
\(\frac{b_{35}}{b_{25}}=(1+R_{25})・・・(1+R_{34})\)・・・❸
が求まります。
ここで❷に❸を代入すると、
\(\frac{B_{35}}{B_{25}}=\frac{b_{35}}{b_{25}}(1+r)^{10}\)・・・❹となる。
これに諸数値を代入すると
k=0.26743÷3.6228643=0.073となるので、(E)が正しい。
問題4 2つの昇給後給与
給与が200,000円である25歳の被保険者について、動態的昇給率に基づいて将来の給与を予測したところ、33歳時点の給与は330,000円、41歳時点の給与は540,000円であった。この動態的昇給率は、以下のx歳における給与指数\(b_x\)を持つ静態的昇給率を基礎としている。(ただし、k>0とする)
\(b_x=\begin{cases}1 (x\leq25)\\ 1+k(x-25) (x>25)\end{cases}\)
ベース・アップ等の要因による昇給率をrとした場合、x歳における静態的昇給率\(R_x\)を基礎とする動態的昇給率は\((1+R_x)×(1+r)-1\)とする。このとき、rに最も近いものを選択肢の中から1つ選びなさい。
(A)0.050 (B)0.051 (C)0.052 (D)0.053
(E)0.054 (F)0.055 (G)0.056 (H)0.057
(I)0.058 (J)0.059
【アクチュアリー2025年 年金数理 第1問(1)】
◆解答・解説
給与指数\(b_x\)が静態的昇給率を基礎としてることから
\(1×(1+R_{25})×・・・×(1+R_{32})=b_{33}\)・・・❶
\(1×(1+R_{25})×・・・×(1+R_{40})=b_{41}\)・・・❷
とわかる。これより、動態的昇給率と各年齢における給与には
\((1+R_{25})×・・・×(1+R_{32})×(1+r)^{8}=\frac{330,000}{200,000}\)
\((1+R_{25})×・・・×(1+R_{40})×(1+r)^{16}=\frac{540,000}{200,000}\)
が成り立つため、❶、❷を用いると上記の式はそれぞれ、
\((8k+1)(1+r)^{8}=1.65\)・・・❸
\((16k+1)(1+r)^{16}=2.7\)・・・❹
となる。ここで、k>0より、❸を\((8k+1)=\frac{1.65}{(1+r)^{8}}\)と変形し、❹の式を下記のように帳尻合わせし、
\((16k+2-1)(1+r)^{16}=2.7\)
❸を代入すると
\(1.65×2×(1+r)^{8}-(1+r)^{16}=2.7\)
と求まる。これを整理すると\((1+r)^{16}-3.3(1+r)^{8}+2.7=0\)とできるので2次方程式の解の公式より
\((1+r)^{8}=\frac{3.3±√10.89-4×2.7}{2}\)
これより、r≈0.052、または0.076とわかる。
r≈0.052の場合、k=0.0125となり、k>0を満たす。
r≈0.076の場合、k=-0.0104166666となり、k>0を満たさない。
そのため、解答は(C)となる。

ピンバック: 年金数理 – wakuwaku_math
一部説明が抜けています。将来のからどうなるのでしょうか?
また、数値代入例やBxがなんなのか説明があるとよりいいと思いました。
ピンバック: 【年金数理】計算基礎率について – wakuwaku math
ピンバック: 【年金数理】年金数理人 2023年度 過去問解説 – wakuwaku math
ピンバック: 【年金数理】アクチュアリー2025年 問題・解答 – wakuwaku math