今回は、ティーレの微分方程式について考えていきましょう。
脱退、昇給、保険料払い込み、給付の支払が連続的の場合、
という、責任準備金の微小区間での挙動を決定する微分方程式が成り立ちます。この微分方程式はデンマークの数学者・天文学者のトルバルド・ティエレが導いたため、この名前がついているようです。
ここでの、λ(ラムダ)はx+t歳における昇給力を表しています。
◆昇給力
年齢xにおける昇給力
※昇給力に関しての詳しい説明は、『昇給力と連続払いの年金制度』を参考にしてください。
また、はx歳加入、t年で脱退した者の脱退時給与1に対する給付額を表しています。
このティーレの微分方程式の構成要素をみていくと、
:保険料払い込みで収入現価が小さくなることによる増加
:責任準備金の評価時点が進み、利息の割り戻しが少なくなることによる増加
: 脱退による相対的な増加
: 昇給による相対的な現象
: 支払いによる減少
をそれぞれ意味していることがわかります。
また、給付が脱退時最終給与に比例し、また保険料も給付比例で積み立てる場合の
ティーレの微分方程式は、
となることも押さえておきましょう。
問題1 ティーレの微分方程式の導出 ★☆☆☆☆
脱退・昇給・保険料の払い込み、給付が連続して起こる場合を考える。ある企業年金制度は定年年齢がなくx歳で加入が起こるものとする。
この加入者1人当たり加入期間t時点での責任準備金は
となります。
(1) ▢に入るものを求めなさい。
(2) はどういったものの期待値か述べなさい。
(3)はどういったものの期待値か述べなさい。
◆解答解説
(1)□にはτ-tが入ります。
(2)加入期間τにおける微小期間dτに脱退するの者の給付額
(3)加入期間τにおける給付額の期待値
問題2 ティーレの微分方程式の導出 ★☆☆☆☆
下記の空欄を埋めなさい。
:加入期間τにおける微小期間dτに脱退するものの給付額の期待値
:加入期間τにおける給与額の期待値
上記の2つを残存数、脱退力、給与指数で表すものとする。
・・・①
・・・②
◆解答解説
・・・❶
・・・❷
問題3 ティーレの微分方程式を求める(教科書問題) ★★★☆☆
以下の空欄にあてはまる適切な式を記入せよ。
ある企業年金制度は、定年年齢がなく、保険料、給付、給与の変動、制度からの脱退はすべて、連続的に起こるものとする。加入期間tの加入者について、記号を次の通り定義する。
ω:最終年齢
\(S_τ^{((x)}dτ\):加入期間τにおける微小期間dτに脱退する者の給付額の期待値
\(B_τ^{(x)}\):加入期間τにおける給与額の期待値
\(P_τ\):加入期間τにおける保険料率
δ:利力
この加入者の給与1当たりの責任準備金\(_tV_x\)は
\(_tV_x=\int_{t}^{ω-x}\fbox{①}dτ-\int_{t}^{ω-x}\fbox{②}dτ\)
ここで、\S_τ^{(x)}dτ\)、\(B_τ^{(x)}\)を残存数\(l_x\),脱退力\(μ_x\),給与指数を用いて表現すると
\(S_τ^{(x)}dτ=\overline{S}_τ^{(x)}・\fbox{③}dτ\)
\(B_τ^{(x)}=\fbox{④}\)
となる。ただし、\(S_τ^{(x)}\)はx歳で加入し、加入期間τで脱退した者の脱退時の給与1当たりの給付現価である。
これらを\(_tV_x\)に代入して整理すると
\(_tV_x=\frac{e^{δt}}{l_{x+t}・b_{x+t}}\int_{t}^{ω-x}\fbox{⑤}dτ\)
となる。さらにΔt時間経過後は
\(_{t+Δt}V_x=\frac{e^{δ(t+Δt)}}{l_{x+t+Δt}・b_{x+t+Δt}}\int_{t+Δt}^{ω-x}\fbox{⑤}dτ\)
となる。この両者の差額は、
\(1=\frac{l_{x+t}(b_{x+t}-b_{x+t+Δt})+(l_{x+t}-l_{x+t+Δt})・b_{x+t+Δt}+l_{x+t+Δt}・b_{x+t+Δt}}{l_{x+t}・b_{x+t}}\)
を利用すると次のように整理される。
\(_{t+Δt}V_x-_tV_x=\frac{1}{l_{x+t}・b_{x+t}}\int_t^{t+Δt}\fbox{⑥}dτ+(e^{δ・Δt}-1)・_tV_x\)
\(+_{t+Δt}V_x・\fbox{⑦}-_{t+Δt}V_x・\frac{b_{x+t+Δt}-b_{x+t}}{b_{x+t}}\)
\(-\frac{1}{l_{x+t}・b_{x+t}}\int_{t}^{t+Δt}\fbox{⑧}dτ\)
上の式は責任準備金の時間経過による変化を示しており、各項の意味は次の通りである。
第1項・・・保険料の支払いによる増(減)
第2項・・・予定利息による増(減)
第3項・・・加入者減少による相対的増(減)
第4項・・・昇給による相対的減(増)
第5項・・・給付支払による減(増)
この式をΔtで除し、Δt→0としての極限を取る。
脱退力\(μ_{x+t}\)について、
\(μ_{x+t}=\lim_{Δt\to 0}\frac{l_{x+t}-l_{x+t+Δt}}{l_{x+t}・Δt}\)
の関係があり、さらに\(λ_{x+t}\)を(x+t)歳における昇給率、すなわち
\(λ_{x+t}=\lim_{Δt\to 0}\frac{b_{x+t+Δt}-b_{x+t}}{b_{x+t}・Δt}\)
と定義すると、次のように上記の極限式が得られる。
\(\frac{d_tV_x}{dt}=P_t+(\fbox{⑨})・_tV_x-\overline{S}_t^{(x)}・μ_{x+t}\)
この式をファクラーの公式の連続表現であるティーレの公式と呼ぶ。
【年金数理人 平成25年 16】
◆解答解説
将来法を用いて、給付現価₋収入現価の考えて、責任準備金を考えると
\(_tV_x=\int_{t}^{ω-x}S_τ^{(x)}・v^{(τ-t)}dτ-\int_{t}^{ω-x}P_τ・B_τ^{(x)}・v^{(τ-t)}dτ\)
⇔\(_tV_x=\int_{t}^{ω-x}S_τ^{(x)}・e^{-δ(τ-t)}dτ-\int_{t}^{ω-x}P_τ・B_τ^{(x)}・e^{-δ(τ-t)}dτ\)
次に
\(S_τ^{(x)}dτ=\overline{S}_τ^{(x)}・(\frac{-dl_{x+τ}}{l_{x+t}})・\frac
{b_{x+τ}}{b_{x+t}}\)
ここで、死力の式より
\(μ_{x+τ}=-\frac{1}{l_{x+τ}}・\frac{dl_{x+τ}}{dτ}\)より
=\(\overline{S}_τ^{(x)}・\frac{l_{x+τ}・b_{x+τ}}{l_{x+t}・b_{x+t}}・μ_{x+τ}dτ\)
\(B_τ^{(x)}=\frac{l_{x+τ}b_{x+τ}}{l_{x+t}b_{x+t}}\)
これらを\(_tV_x\)に代入して、\(\frac{e^{δ(t)}}{l_{x+t}・b_{x+t}}\)を共通因数としてくくると
\(_tV_x=\frac{e^{δt}}{l_{x+t}・b_{x+t}}\int_{t}^{ω-x}l_{x+τ}・b_{x+τ}(S_τ^{(x)}μ_{x+τ}-P_τ)e^{-δτ}dτ\)
次に、tをt+Δtの場合を考えると
\(_{t+Δt}V_x=\frac{e^{δ(t+Δt)}}{l_{x+t+Δt}・b_{x+t+Δt}}\int_{t+Δt}^{ω-x}l_{x+τ}・b_{x+τ}(S_τ^{(x)}μ_{x+τ}-P_τ)e^{-δτ}dτ\)・・・❶
となる。
ここで、便宜上、\(\fbox{⑤}=l_{x+τ}b_{x+τ}P_τe^{-δ(τ)}dτ=A_τ\)とすると、
\(_{t+Δt}V_x=\frac{e^{δ(t+Δt)}}{l_{x+t+δt}b_{x+t+Δt}}(\int_{t}^{ω-x}A_τdτ-\int_{t}^{Δt}A_τdτ)\)
ここで、式中に\(\frac{1}{l_{x+t}b_{x+t}}\)が入るように帳尻合わせを行うと
=\(e^{δ(t+Δt)}(\frac{1}{l_{x+t}b_{x+t}}-\frac{1}{l_{x+t}b_{x+t}}+\frac{1}{l_{x+t+Δt}・b_{x+t+Δt}})×(\int_{t}^{ω-x}A_τdτ-\int_{t}^{Δt}A_τdτ)\)
ここで、初めの( )内の第1項は\(\int_{t}^{ω-t}A_τdτ-\int_{t}^{Δt}A_τdτ\)へそのまま分配し、その後、初めの( )内の第2項、第3項は\(\int_{t}^{ω-x}A_τdτ-\int_{t}^{Δt}A_τdτ\)を\(\int_{t}^{ω-x}A_τdτ\)に戻して、乗じるといった工夫を行うと、
\(=e^{δ・Δt}_tV_x-\frac{e^{δ(t+Δt)}}{l_{x+t}b_{x+t}}\int_{t}^{t+Δt}A_τdτ\)
\(+\frac{l_{x+t}b_{x+t}-l_{x+t+Δt}b_{x+t+Δt}}{l_{x+t}b_{x+t}}_{t+Δt}V_x\)・・・❷
となる。ここで、目的の式を見ると責任準備金\(_{t+Δt}V_x\)には
\(\frac{b_{x+t+Δt}-b_{x+t}}{b_{x+t}}\)なるものがかけられており、この分母分子に\(l_{x+t}\)を乗じると\(\frac{l_{x+t}(b_{x+t+Δt}-b_{x+t})}{l_{x+t}・b_{x+t}}\)が現れる。これより、❷の第3項を変形し、\(\frac{l_{x+t}(b_{x+t+Δt}-b_{x+t})}{l_{x+t}・b_{x+t}}\)といった形が出現するように変形していく。
\(\frac{l_{x+t}b_{x+t}-l_{x+t+Δt}b_{x+t+Δt}}{l_{x+t}b_{x+t}}_{t+Δt}V_x\)
=\(\frac{l_{x+t+Δt}(l_{x+t}-l_{x+t+Δt})}{l_{x+t}・b_{x+t}}-\frac{l_{x+t+Δt}-l_{x+t}}{l_{x+t}b_{x+t}}_{t+Δt}V_x\)
これより、
最後に、\(A_τ=-l_{x+τ}b_{x+τ}P_τe^{-δt}+l_{x+τ}b_{x+τ}μ_{x+τ}\overline{S}_τ^{(x)}\)と分離できるので、
\(_{t+Δt}V_x-_tV_x\)
\(=\frac{1}{l_{x+t}b_{x+t}}\int_{t}^{t+Δt}l_{x+τ}b_{x+τ}P_τe^{-δ(τ-t-Δt)}\)
\(+(e^{δ・Δt}-1)_tV_x+_{t+Δt}V_x(\frac{b_{x+t+Δt}}{b_x+t}・\frac{l_{x+t}-l_{x+t+Δt}}{l_{x+t}})\)
\(-_{t+Δt}V_x\frac{b_{x+t+Δt}-b_{x+t}}{b_{x+t}}-\frac{1}{l_{x+t}b_{x+t}}\int_{t}^{t+Δt}l_{x+τ}b_{x+τ}μ_{x+τ}\overline{S}_τ^{(x)}e^{-δ(τ-t-Δt)}dτ\)
最後にティーレの微分方程式から
\(\frac{d_tV_x}{dt}=P_t+(δ+μ_{x+t}-λ_{x+t})・_tV_x-\overline{S}_t^{(x)}・μ_{x+t}\)
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ティーレの微分方程式に関しては、こちらの本にも解説が掲載されています。
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