今回は、責任準備金の算出方法の1つである過去法についてみていきます。
過去法とは、責任準備金の計算時点までの過去の収入の総終価からかこの支出の総終価を差し引いて求めることができます。アクチュアリー、年金数理人といった年金数理において責任準備金を求める際に、一般的に将来の支出の総現価から、将来の収入の総現価を引いて求める場合(将来法という)より、算出が楽になる場合があります。
過去法の責任準備金に関して
加入年齢方式で運営されている年金制度においてt年度経過後の責任準備金を過去法で求めてみましょう。
ここで、両辺にを乗じ、計算基数で整理すると
・・・①
と責任準備金が計算基数と保険料で表すことができます。
上記は、途中脱退者に対しての給付も想定した式のため、もし定年退職者のみ給付を行う場合は、
・・・②
となり、計算の工数が将来法より少なくなります。
実際問題として、加入年齢方式の保険料は、退職者への給付をAとすると
・・・③
となるので、②は、計算基数と、給付現価のみで表すことができます。
では実際に問題を見ていきましょう。
問題1 定額方式の責任準備金の見直し ★★★☆☆
定年退職者に退職時からの年額1の10年確定年金を支払う年金制度が加入年齢方式で運営されている。年金支給対象者を「定年退職者」から「50歳以上の退職者」に見直した。このとき、現在50歳の加入者の変更前の責任準備金に対する、制度変更後の責任準備金の倍率として最も近いものは次のいずれか。なお、保険料および給付は年1回期初払いとする。
(前提条件)
・特定年齢:40歳 ・予定利率:3.0%
・ ・生存脱退率:すべての年齢で2.0%
・死亡脱退率:0%
・脱退時期:定年退職は60歳到達年度の期末
・生存脱退も期末とし、翌期初から年金の支給を開始します。
(A)1.20 (B)1.23
(C)1.26 (D)1.29
(E)1.32 (F)1.35
【年金数理人 年金数理 平成26年】
◆解答解説
責任準備金の過去法を用いて算出していきます。
退職者のみ給付を考える制度のため、過去の給付は0と考え、収入₋給付による制度変更前の過去法の責任準備金は、
・・・❶
となります。ここで退職者に年額1の10年確定年金を支払うので・・・❷
❷を❶に代入すると、
・・・❸
ここで生存脱退率が定率で与えられているので、❸の式を生存脱退率が出現するようで各分数の分母分子を除すると
・・・❸’
ここで生存脱退率は年齢にかかわらず定率なので、
,
となります。
,
より
❸’=0.6447993754×0.5863931644
=0.3781059459
次は制度変更後の責任準備金についてみていきましょう。
支給対象者を「50歳以上の退職者」にしているので、60歳までの退職と60歳になった場合は、一律全員退職するので
・・・❹
と責任準備金を表記できます。
ここで計算基数の変形式・・・❺
をもちいると
❹=
となります。これを求めると0.475620
となります。
問題2 過去法の責任準備金・定年年齢 ★★★☆☆
中途退職者および定年退職者に対して「加入年数×脱退時の給与」の一時金を支給する制度を発足する。計算の前提は以下のとおりとする。 次の(ア)および(イ)について答えなさい。
<計算の前提>
・予定新規加入年齢は20歳
・定年年齢は\(x_r\)歳 (\(x_r\)>21)
・期初に\(x_r\)−1歳の被保険者は、期末に中途退職するか、次の年度の期初に定年退職する
・新規加入および保険料の払い込みは年1回期初に発生し、期初において、「定年退職による脱退→新規加入→保険料の払い込み」の順に発生する
・中途退職による脱退(加入中の死亡は発生しない)および昇給は年1回期末に発生し、期末において、「中途退職による脱退→昇給」の順に発生する
・発足から第2年度末まで脱退及び昇給は計算基礎率どおり推移するものとする
・財政方式は加入年齢方式を採用し、給与1に対する標準保険料率は1.375
・予定利率:4.0%
・脱退率:\(q_x= \frac{1}{50}\) (20 ≦ x ≦\(x_r\) −1)
・昇給指数:\(b_x=\frac{52}{49}^{x-20}\) (20 ≦ x ≦ \(x_r\))
(ア)第1年度の新規加入者は100人(加入年齢は全員20歳、1人あたりの給与は一律100,000円)、第2年度の新規加入者は0人としたとき、制度全体の第2年度末の責任準備金の額として最も近いものを選択肢の中から1つ選びなさい。
(A) 25,120千円 (B) 25,620千円 (C) 26,120千円 (D) 26,620千円
(E) 27,120千円 (F) 27,620千円 (G) 28,120千円 (H) 28,620千円
(I) 29,120千円 (J) 29,620千円
(イ)定年年齢\(x_r\)を次の選択肢の中から1つ選びなさい。
(A) 56 (B) 57 (C) 58 (D) 59
(E) 60 (F) 61 (G) 62 (H) 63
(I) 64 (J) 65
◆解答解説
(ア)発足から第2年度末まで脱退及び昇給は計算基礎率どおり推移するものとするといった条件や発足から数年しかたっていない責任準備金をもとめるといったことから、過去法によって責任準備金を考える。
中途脱退の後に昇給がなされることに注意すると
\(V=100,000×100×(\frac{49}{50})^2×(\frac{52}{49})^2(\frac{l_{20}・v^{20}+l_{20}・v^{21}・\frac{52}{49}・\frac{49}{50}}{l_{20}・v^{22}・(\frac{52}{49})^{2}・(\frac{49}{50})^{2}}× 1.375-\frac{l_{20}・v^{21}・\frac{1}{50}×1+l_{20}・v^{21}・\frac{52}{49}・\frac{49}{50}・\frac{1}{50}×2}{l_{20}・v^{22}・(\frac{52}{49})^{2}・(\frac{49}{50})^{2}})\)
\(=29,120,000\)
これより、(I)が正しい。
(イ)具体的な数値がわかっている標準保険料率から定年年齢を考えていく。
※\(v・\frac{49}{50}・\frac{52}{50}\)が計算を行うと、1になることに着目する。
\(\frac{l_{20}\frac{1}{50}・v^{20}\left\{v+2v+・・・+(x_r-20)v\right\}+l_{20}・v^{x_r}(\frac{49}{50})^{x_r-20}・(\frac{52}{49})^{x_r-20}(x_r-20)}{\sum_{x=20}^{x_r-1}D_{x}・b_{x}}=1.375\)
⇔\(\frac{\frac{1}{50}v(x_r-20)(x_r-20+1)+(x_r-20)}{(x_r-20)}=1.375\)
⇔\((x_r-20+1)=39\)
よって、\(x_r=58\)
|
合格へのストラテジーにも過去法を 使った問題の掲載があります。
|

ピンバック: 【年金数理】責任準備金について – wakuwaku math