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【年金数理】実利率と予定利率によるずれ

今回は、極限方程式の派生の内容として、実利率と予定利率によるずれの影響について問題を通して考えていきましょう。

ちなみにこのテーマは、年金数理人ではあまり見ないテーマであり、アクチュアリー試験のほうで頻繁に取り扱われます。

 


問題1 マイナス利率 ★★☆☆☆

ある年金制度は定常上に達しており、保険料および給付ともに年1回期初払いである。予定率を2.0%とするとき次の各問(1)、(2)に答えなさい。また、必要であれば次の諸数値を使用しなさい。

<諸数値>

1.02^{20}=1.48595 ・0.99^{20}=0.81791

(1)あるとき20年間にわたって、積立金の運用利回りが毎年マイナス1.0%となったため、20年後の期末における積立金が定常状態の積立金のα倍となった。この時、αに最も近いものを選択肢の中から1つ選びなさい。

(A)0.30 (B)0.35 (C)0.40 (D)0.45

(E)0.50 (F)0.55 (G)0.60 (H)0.65

(J)0.75

 

(2)積立金の運用利回りが予定利率を下回った場合の翌年度において、減少した積立金で今後収支相等するように給付額のみを削減する(保険料および予定利率は変更しない)ことで積立金の減少を抑制することを考える。このとき、(1)と同様に20年にわたって積立金の運用利回りが毎年マイナス1.0%となった場合の20年後の期末における積立金が定常状態の積立金のb倍となった。この時、bにもっともの近いものを選択肢の中から1つ選びなさい。

(A)0.50 (B)0.55 (C)0.60 (D)0.65

(E)0.70 (F)0.75 (G)0.80 (H)0.85

(J)0.95

 

【アクチュアリー 年金数理 平成29年】


◆解答解説

はじめ、定常状態が成立しているので極限方程式の立式が出来ます。

・・・❶

これを整理すると

・・・❷

となります。また、マイナス利率が続いた場合の20年度期末時点での積立金の式は

・・・❸

となります。これに❷を代入すると

となるので、解答は(D)となります。

(2)

(1)では予定利率がマイナス利率になった場合は、そのままでいたが(2)では予定利率がマイナス利率になった場合は、給付を調整して、積立金の減少をできるだけ抑えようといった場合について考えていく。予定利率下回った際の期末の積立金は

・・・❹

となります。

2年目以降は予定利率のまま、保険料を調整せず、給付のみを変更し、収支相等を考えるので、極限方程式は

・・・❺

となります。

❹、❺より

・・・❻

も求まる。

ただ、実際には予定利率での運用はできずマイナス利率が続く形となってしまうので、実際の運用の式は

・・・❼

ここでまた給付を調整する作業を行うので、3年目の給付をまた調整し

・・・❽

を考える。ただ引き続きマイナス利率が続くので

・・・❾

となる。

ここから、一般化を行うと、20年後の積立金は

・・・❿

となる。これより、

・・・❿’

となる。よって(B)


問題2 マイナス利率② ★★☆☆☆

ある年金制度は定常状態に達しており、保険料および給付とも年1回期初に支払っている。予定利率を3.0%とするとき、次の(ア)および(イ)の各問に答えなさい。また、必要であれば次の諸数値も使用しなさい。

<諸数値>

\(1.03^{10}=1.34392 0.98^{10}=0.81707\)

(ア)あるとき10年間にわたって、積立金の運用利回りが毎年マイナス2.0%になったため、10年後の期末における積立金が定常状態の積立金のα倍となった。このとき、αに最も近いものを選択肢のなかから1つ選びなさい。

(A) 0.550 (B) 0.555 (C) 0.560 (D) 0.565

(E) 0.570 (F) 0.575 (G) 0.580 (H) 0.585

(I) 0.590 (J) 0.59

(イ) 積立金の運用利回りが予定利率と異なる年度があった場合、当該年度の期末積立金が極限方程式を満たす(保険料および予定利率は変更しない)ような給付額を、翌年度の給付額とすることを考える。
このとき(ア)と同様に10年間にわたって積立金の運用利回りが毎年マイナス2.0%となった場合の10年後の期末における積立金が、当初の定常状態の積立金の𝑏倍となった。このとき、𝑏に最も近いものを選択肢の中から1つ選びなさい。

(A) 0.60 (B) 0.61 (C) 0.62 (D) 0.63
(E) 0.64 (F) 0.65 (G) 0.67 (H) 0.68
(I) 0.69 (J) 0.70

【2025年 アクチュアリー 年金数理 第2問(1)】


◆解答解説

(ア)定常状態といった条件から

\(F=(F+C-B)(1+i)\)

また、運用利回りがマイナスになった初年度の年度末の積立金\(F_1\)とすると

\(F_1=(F+C-B)×0.98\)

同様に

\(F_2=(F_1+C-B)×0.98=0.98^2F+(C-B)\left\{0.98+0.98^2 \right\}\)

\(F_3=(F_2+C-B)×0.98=0.98^3F+(C-B)\left\{0.98+0.98^2 +0.98^3\right\}\)

とわかるため。一般化すると

\(F_{10}=0.98^{10}F+(C-B)\left\{\frac{1-0.98^{10}}{1-0.98} \right\}\)

となる。ここで、定常状態の式から\((C-B)=-\frac{i}{1+i}F\)を求め、上記の式にこれと諸数値を代入すると

\(F_{10}=F\left\{0.98^{10}-\frac{0.03}{1.03}×\frac{1-0.98^{10}}{1-0.98} \right\}\)

\(=0.555995146\)

となるため、(B)が正しい。

(イ)

また、運用利回りがマイナスになった初年度の年度末の積立金\(F_1\)とすると極限方程式から

\(F_1=(F+C-B)×0.98=0.98×(1-\frac{0.03}{1.03})F\)・・・❶

となる。

ここで、期末積立金が極限方程式を満たす(保険料および予定利率は変更しない)ような給付額を、翌年度の給付額とすることを考えると

\(F_1=(F_1+C-B_2)×1.03\)

を導くことができる。これより、

\(\underline{C-B_2}=-\frac{0.03}{1.03}F_1\)・・・❷

が求まる。

※代入し、計算を処理しやすいよう\(C-B_x\)について整理している。

❷を用いると

\(F_2=(F_1+\underline{C-B_2})×0.98\)

\(=(0.98-0.98×\frac{0.03}{1.03})F_1\)

同様に

\(F_3=(0.98-0.98×\frac{0.03}{1.03})^2F_{1}\)

とわかる。これより、

\(F_{10}=(0.98-0.98×\frac{0.03}{1.03})^9F_{1}\)

となる。ここで❶を用いると

\(F_{10}=(0.98-0.98×\frac{0.03}{1.03})^{10}F\)

\(=0.98^{10}×\frac{1.00}{1.03}^{10}F=0.60797517709F\)

よって、(B)が正しい。


問題3 給付改善  ★★★☆☆

ある年金制度は定常状態に達しており、X年度末の積立金はFである。保険料Cおよび給付Bはともに年1回期初に支払っており、給付Bは保険料Cの2倍である。予定利率を2.0%とするときに、次の①~③について空欄をa~kまでのそれぞれに当てはまる数字を0~9の中から考えなさい。なお①および③はは既約分数とし、②は小数点以下第2位を四捨五入して求めなさい。また、②および③について、保険料の収入現価および給付現価には将来加入が見込まれる被保険者にかかわる保険料収入現価および給付現価を含むものとする。

①Fを用いてCを分数で表すと

となる。

②X+1年度から、Y年度までの各年度において積立金の運用利回りが予定利率をうわまったため、Y年度末時点で積立金と保険料の収入現価の合計が1.2倍となった。

Y年度末時点の積立金はFの[d].[e]倍である

なおX+1年度からY年度まで積立金の運用利回りが予定利率を上回ること以外は計算基礎率通りに数位したものとし、その間、保険料および給付の見直しは行わなかった。

③Y+1年度末以降の毎年度末においては、以下の条件を満たすように翌年度以降の給付の見直しを行うものとします。

<条件>

毎年度末時点の積立金と保険料の収入現価の合計が給付現価の1.2倍に等しくなるように翌年度以降の給付一律改善する。

Y+1年度以降、保険料の見直しは行わず、年金財政が基礎率通りに推移する(積立金の運用利回りも予定利率と等しい)場合のY+n年度の給付は

となる。


◆解答解説

①は定常状態とあるので、極限方程式を考えると

F=(F+C-2C)(1+i)

C=\frac{d}{1}F・・・❶

これより、i=0.02なので

C=\frac{1}{51}F

となります。これより、a=1、b=5、c=1となります。

②Y年度末時点で、保険料の収入現価と積立金の合計は給付現価の1.2倍だったので、

・・・❷

ここで、❶よりC=dFが成り立っているので、これを❷に代入すると

とわかるのでd=1、c=4

 

・・・❸

これより

・・・❸’

が成り立ちます。

また、給付改善の条件より第Y+n年度において

・・・❹

が成立します。

これは第Y+n-1年度においても成立するので、

・・・❺

が成立します。これを、❸’に代入し、Bのみの漸化式にすると

となる。これより

となります。

1⃣

②においては、極限方程式における期初払いの○○現価はC、Bそれぞれに

を乗じたものになります。

期初払いの場合は、

の関係になるので、関係性が理解できると思います。

ちなみに期末払いの場合は、

を乗じることで現価での表記が出来ます。

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