今回は、平均余命を取り巻く関係式とその利用についてみていきましょう。
が連続した関数とみなすことが出来る場合は、
が成り立ちます。この時、平均余命を年齢に関して微分すると
となり、という関係式が成り立ちます。
問題1 完全平均余命と死力の関係式➀ ★★☆☆☆
\(\overset{\small{○}}{e}_x=0.75(64-x)\)とする。\(l_0\)=100,000のとき、\(l_x=75,000\)となるxを求めなさい。なお被保険者数(\(l_x\))は年齢(x)に関して、微分可能な関数とする。
【アクチュアリー 平成17年】
◆解答解説
まず、微分の関係式⇒死力⇒生存率という手順で必要情報を求めていく。
\(\frac{d\overset{\small{○}}{e}_x}{dx}=-0.75\)
となります。ここで
\(\frac{d\overset{\small{○}}{e}_x}{dx}=\overset{\small{○}}{e}_x・μ_x-1\)
これより、\(0.75=0.75(64-x)μ_x-1\)
⇔\(μ_x=\frac{1}{3(64-x)}\)
となります。
問題2 完全平均余命と死力の関係式② ★★☆☆☆
\(\overset{\small{○}}{e}_x=\frac{2}{3}(80-x)\)とする。\(l_0=100,000\),\(l_x=500,000\)となるxとして最も適切なものを、次の選択肢から1つ選びなさい。なお、被保険者数(\(l_x\))は年齢(x)に関して微分可能な関数とする。
<記号>
\(\overset{\small{○}}{e}_x=\frac{\int^{80}_xl_ydy}{l_x}\) (0≦x≦80)
(A)32歳 (B)36歳 (C)40歳 (D)44歳 (E)48歳
(F)52歳 (G)56歳 (H)60歳 (I)64歳 (J)68歳
◆解答・解説
\(\frac{d\overset{\small{○}}{e}_x}{dx}=\overset{\small{○}}{e}_x・μ_x-1\)
から\(μ_x=\frac{1/2}{(80-x)}\)とわかる。
\(μ_x=\frac{k}{ω-x}\)でkが整数の場合、\(l_x=l_0(1-\frac{x}{ω})^{k}\)
が成り立つ。これより、
\(50,000=100,000(1-\frac{x}{80})^{\frac{1}{2}}\)
となり、\(\frac{x}{80}=0.75\)から、x=60とわかる。これより解答は(H)となる。
問題3 移住と\(T_x=l_x\cdot \overset{\small{○}}{e}_x\) ★★★★☆
.定常人口の以下の 2 つの国(A 国、B 国)がある。「ある年」以降毎年、A 国の 20 歳の者のうち 1 割が B 国に移住し、B 国の 20 歳の者のうち 1 割が A 国に移住するようになった。この状態が続き、A 国および B 国が新たな定常人口となったときにおける A 国と B 国の人口の合計に最も近いものは次のいずれか。

【その他の前提】
・移住した者が従う死力は、「ある年」より前における A 国および B 国の各年齢における死力の単純平均値とする
・移住していない者は「ある年」以降も「ある年」より前の死力に従うものとする
・「ある年」より前は移住が一切なく、「ある年」以降も上記以外の移住は発生しないものとする
・A 国および B 国における出生者数は「ある年」以降も変化はないものとする
(A) 20,600 千人 (B) 20,700 千人 (C) 20,800 千人 (D) 20,900 千人
(E) 21,000 千人 (F) 21,100 千人 (G) 21,200 千人 (H) 21,300 千人
【年金数理人 2024年 (2)】
◆解答解説
移住について考える問題。
ある年度以前のA国+B国の人口は\(T_0^A+T_0^B\)であり、定常状態における移住者はそれぞれ
A国→B国への移住者:\(T^{A:em}=0.1T_{20}^A\)
B国→A国への移住者:\(T^{A:em}=0.1T_{20}^B\)
となる。また、すでにある年度から定常状態に至るまでの間の移住者の合計を\(T^{im}\)(※emはemigrateを。imはimmigrate:移住を表す。)とすると、定常状態でのA国+B国の人口は
\((T_{0}^{A}-0.1T_{20}^A)+(T_{0}^B-0.1T_{20}^{B})+T^{im}\)
と考えることができる。そのため各人口Tを求める必要があります。
\(T_x=\int_{0}^{ω-x}l_{x+t}dt\)・・・❶
\(\overset{\small{○}}{e}_x=\frac{\int_{0}^{ω-x}l_{x+t}dt}{l_x}\)・・・❷
ここで、上記の❶、❷から
\(T_x=\overset{\small{○}}{e}_x\cdot l_{x}\)・・・❸
を導くことができます。これを用いると
\(T_0^{A}=0.8(100-0)×200=16,000\) (単位:千人)
\(T_0^{B}=0.5(100-0)×100=5,000\) (単位:千人)
次に生存数,\(T^A_{20},T^B_{20}\)を算出するために、死力が必要となってくるため、死力について考えていきます。
平均余命が与えられており、死力が不明のため、
\(\frac{d\overset{\small{○}}{e}_x}{dx}=\overset{\small{○}}{e}_x・μ_x-1\)
を用いて死力を求めていきます。ある年以前の死力について考えていきましょう。A国について
\(\frac{d\overset{\small{○}}{e}_x^A}{dx}=μ_x\cdot \overset{\small{○}}{e}_x^A-1\)
\(μ_x^A=\frac{1}{4}\frac{1}{(100-x)}\)
となります。同様にB国についても
\(μ_x^B=\frac{1}{(100-x)}\)
ここで死力が\(μ_x=\frac{k}{(ω-x)}\)の形で表されるとき
\(l_x=l_0(1-\frac{x}{ω})^k\)
の関係を用いると
\(l_{20}^A=200×(1-\frac{20}{100})^{\frac{1}{4}}\)=189.1483218
\(l_{20}^B=100×(1-\frac{20}{100})=80\)
とわかるので、これより
\(T_{20}^A=l_{20}^A× \overset{\small{○}}{e}_{20}^A\)
=12,105.4925952
\(T_{20}^B=l_{20}^B×\overset{\small{○}}{e}_{20}^B\)
=3,200
となります。
ここで、移住した者が従う死力は、「ある年」より前における A 国および B 国の各年齢における死力の単純平均値という条件があるので、
\(μ_x^{im}=\frac{1}{2}(μ_x^A+μ_x^B)\)
=\(\frac{1}{2}(\frac{1}{4(100-x)}+\frac{1}{100-x})=\frac{5}{8(100-x)}\)
と移住したものの死力がわかります。また、これより
\(\frac{1-k}{k}=\frac{5}{8}\)より、\(k=\frac{8}{13}\) が成り立つので、
\(\overset{\small{○}}{e}_x^{im}=\frac{8}{13}(100-x)\)
これより、
\(T_{20}^{im}=0.1×(l_{20}^A+l_{20}^B)× \overset{\small{○}}{e}_{20}^{im}\)
=1325.0378919385
となる。これより、
\((T_{0}^{A}-0.1T_{20}^A)+(T_{0}^B-0.1T_{20}^{B})+T^{im}\)
=16,000-0.1×12,105.4925952+5,000-0.1×3,200+1325.0378919385
=20,794.488632119 (単位:千人) よって、(C)が正しいとわかります。

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